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分詞構文とは、接続詞と動詞を分詞に変えることで作られる構文です。分詞構文を使うと文と文をつなぐときに表現がスマートになり、英語らしい簡潔な文を作ることができます。
しかし、分詞構文を使う際に最も注意しなければならないのが「主語」の問題です。分詞構文の主語は、基本的には主節の主語と同じものになります。これが分詞構文の大原則です。
例えば、次の文を見てみましょう。
分詞構文の主語の基本
Walking to school, I met my friend.
学校に歩いていく途中、私は友達に会いました。
この例文では、「Walking to school」という分詞構文の部分と「I met my friend.」という主節があります。分詞構文の主語は明示されていませんが、主節の主語である「I」が分詞構文の主語にもなっています。つまり「学校に歩いて行ったのは私」であり、「友達に会ったのも私」です。
分詞構文が使われる理由の一つは、文を短くして読みやすくすることです。2つの文を接続詞でつなぐよりも、分詞構文を使うことで文がスッキリします。
接続詞を使った文
When I walked to school, I met my friend.
学校に歩いていくとき、私は友達に会いました。
分詞構文を使った文
Walking to school, I met my friend.
学校に歩いていくとき、私は友達に会いました。
このように、分詞構文を使うことで接続詞と主語を省略し、文をより簡潔にすることができます。
分詞構文では、主節の主語と分詞構文の主語が同じ場合に主語の省略が行われます。これが基本ルールです。この「主節の主語 = 分詞構文の主語」という原則を守ることで、英文が明確で理解しやすくなります。
いくつか例文で確認してみましょう。
主語が省略された分詞構文①
Feeling tired, she went to bed early.
疲れを感じたので、彼女は早く寝ました。
この例では、「疲れを感じた」のも「早く寝た」のも同じ「彼女」です。主節の主語と分詞構文の主語が同じなので、分詞構文の主語は省略されています。
主語が省略された分詞構文②
Having lost his key, John couldn't enter the house.
鍵をなくしてしまったので、ジョンは家に入れませんでした。
この例文では、「鍵をなくした」のも「家に入れなかった」のも同じ「ジョン」です。主節の主語と分詞構文の主語が同じなので、分詞構文の主語は省略されています。
基本的に分詞構文の主語は省略されますが、主節の主語と分詞構文の意味上の主語が異なる場合には、特別な構文が必要になります。その一つとして「独立分詞構文(absolute participle construction)」があります。この構文では主語を明示し、それに分詞が続くという形を取ります。
例えば、次の文を見てみましょう。
独立分詞構文(主語が明示された分詞構文)
The weather being nice, we decided to go for a picnic.
天気が良かったので、私たちはピクニックに行くことにしました。
この例文では、分詞構文の主語は「The weather(天気)」ですが、主節の主語は「we(私たち)」です。両者が異なるため、独立分詞構文を使って「The weather」という主語を明示しています。
主語が異なる場合に独立分詞構文を使わずに通常の分詞構文を使うと、文法的に間違った表現になります。
間違った分詞構文
Walking down the street, the building caught my eye.
(誤)通りを歩いていると、建物が私の目を引きました。
この例文では、「Walking down the street」という分詞構文の後に続く主節の主語が「the building(建物)」になっています。しかし、「通りを歩いていた」のは「建物」ではなく「私」のはずです。このように、分詞構文の意味上の主語と主節の主語が異なる場合、文法的に誤った表現になってしまいます。
正しい表現は以下のようになります。
修正した文(接続詞を使用)
As I was walking down the street, the building caught my eye.
私が通りを歩いていると、建物が私の目を引きました。
修正した文(語順の変更)
Walking down the street, I noticed a building that caught my eye.
通りを歩いていると、私は目を引く建物に気づきました。
また、以下のように別の表現方法もあります。
別の表現(動名詞を使う)
While walking down the street, I noticed a building that caught my eye.
通りを歩いている間に、私は目を引く建物に気づきました。
独立分詞構文で主語を明示する場合、基本的な語順は「主語+分詞」です。この形を使うことで、分詞構文の主語が主節の主語と異なることを明確に示すことができます。
例えば、次の例文を見てみましょう。
「主語+分詞」の例①
The sun having set, it began to get cold.
太陽が沈んだので、寒くなり始めました。
この例文では、「The sun」が分詞構文の主語で、「having set」が分詞です。主節の主語は「it」で、分詞構文の主語「The sun」とは異なります。
「主語+分詞」の例②
His father being ill, Tom had to stay at home.
父親が病気だったので、トムは家にいなければなりませんでした。
この例文では、「His father」が分詞構文の主語で、「being ill」が分詞です。主節の主語は「Tom」で、分詞構文の主語「His father」とは異なります。
主語が代名詞の場合は、目的格の形を使うこともあります。
代名詞を使った独立分詞構文
Him being absent, we postponed the meeting.
彼が欠席だったので、私たちは会議を延期しました。
この例では、代名詞「he」の目的格「him」が分詞構文の主語として使われています。
独立分詞構文とは、分詞構文の主語が主節の主語と異なる場合に使われる特別な形の分詞構文です。「独立」という名前の通り、分詞構文の主語が主節から独立しているのが特徴です。
独立分詞構文は、主に以下のような場合に使われます。
例えば、次の例文で確認してみましょう。
独立分詞構文(理由)
My car having broken down, I had to take a taxi.
車が故障したので、タクシーに乗らなければなりませんでした。
この例文では、「My car」が分詞構文の主語で、「having broken down」が分詞です。主節の主語は「I」です。分詞構文は「理由」を表しており、「車が故障したので」という意味になります。
独立分詞構文(時間)
The concert ending at 10, we went to a restaurant afterwards.
コンサートが10時に終わったので、その後レストランに行きました。
この例文では、「The concert」が分詞構文の主語で、「ending at 10」が分詞です。主節の主語は「we」です。分詞構文は「時間」を表しており、「コンサートが10時に終わったので」という意味になります。
独立分詞構文の主語は、分詞構文内で明示的に示されます。これにより、主節の主語とは異なる動作主や状況を表現することができます。独立分詞構文の主語は、通常の文の主語と同様に、名詞や代名詞が使われます。
独立分詞構文の主語を使いこなすためのポイントをいくつか紹介します。
1. 主語の選択:独立分詞構文の主語は、分詞の動作を行うものや状態の主体になるものを選びます。
主語の選択の例
The rain falling heavily, we decided to stay indoors.
雨が激しく降っていたので、私たちは屋内にいることにしました。
2. 代名詞の場合:代名詞を独立分詞構文の主語として使う場合は、目的格の形を使うことが一般的です。
代名詞の例
Him being late again, we started the meeting without him.
彼がまた遅刻したので、私たちは彼なしで会議を始めました。
3. 所有格を使った表現:所有関係を示す場合は、所有格と名詞の組み合わせを使うことができます。
所有格を使った例
Her husband working overseas, she lives alone with her children.
夫が海外で働いているので、彼女は子供たちと一人で暮らしています。
独立分詞構文を使いこなすには、主語と分詞の組み合わせがしっくりくるかどうかを考えることが大切です。「〜が〜している」という状況が自然に描写できるような組み合わせを選びましょう。
分詞構文の主語に関しては、いくつか間違いやすいポイントがあります。特に日本人学習者がつまずきやすい点を見ていきましょう。
分詞構文を使う際の最も一般的な間違いは、分詞構文の意味上の主語と主節の主語が一致していない場合です。この誤りは、分詞構文の基本ルールを無視してしまうことで起こります。
主語が不一致の例(誤)
✘ Driving along the coast, the beach looked beautiful.
(誤)海岸沿いを運転していると、ビーチは美しく見えました。
この例文では、「Driving along the coast」という分詞構文の後に続く主節の主語が「the beach(ビーチ)」になっています。しかし、「海岸沿いを運転していた」のは「ビーチ」ではありません。ビーチが運転するというのは意味が通じません。
正しい表現は次のようになります。
修正例①(主語を合わせる)
Driving along the coast, we saw the beautiful beach.
海岸沿いを運転していると、私たちは美しいビーチを見ました。
修正例②(独立分詞構文を使う)
While we were driving along the coast, the beach looked beautiful.
私たちが海岸沿いを運転していると、ビーチは美しく見えました。
分詞構文を使う際には、意味上の主語が明確であることが重要です。意味上の主語が不明確だと、文の解釈が難しくなります。
意味上の主語が不明確な例(誤)
Looking around the room, there were many paintings on the wall.
(誤)部屋を見回すと、壁にはたくさんの絵がかかっていました。
この例文では、「Looking around the room」という分詞構文の後に「there were many paintings」という主節が続いています。しかし、「there」は実質的な主語ではなく、「部屋を見回した」のが誰なのか明確ではありません。
正しい表現は次のようになります。
修正例
Looking around the room, I saw many paintings on the wall.
部屋を見回すと、壁にたくさんの絵がかかっているのが見えました。
分詞構文で主語の不一致を避けるためには、以下のチェックポイントを意識しましょう。
具体的な確認方法は以下の通りです。
主語の確認
Walking to school, I saw a cat.
学校に歩いていくとき、私は猫を見ました。
この例文では、「Walking to school」の意味上の主語と「I saw a cat」の主語「I」が同じです。これは正しい分詞構文です。
不自然な例(誤)
Being only five years old, the violin was difficult to play.
(誤)5歳にすぎなかったので、バイオリンは弾くのが難しかった。
この例文では、「Being only five years old」の主語が「the violin」となってしまい、「バイオリンが5歳」という不自然な意味になってしまいます。
正しい表現は次のようになります。
修正例
Being only five years old, I found the violin difficult to play.
5歳にすぎなかったので、私はバイオリンを弾くのが難しいと感じました。
分詞構文が正しいかどうか迷ったときは、接続詞を使った二つの文に書き換えてみるといいでしょう。
書き換えのテスト(分詞構文)
Walking along the street, I saw an old friend.
通りを歩いているとき、私は旧友に会いました。
書き換え後(接続詞を使った文)
When I was walking along the street, I saw an old friend.
私が通りを歩いているとき、私は旧友に会いました。
書き換えたときに主語が同じで意味が通じれば、分詞構文は正しいと判断できます。
ここでは、分詞構文の主語に関する理解を深めるために、様々なパターンの例文を紹介します。実際の英語の文献や会話からの例も含めていますので、使い方を確認してみましょう。
現在分詞の例①
Walking in the rain, I caught a cold.
雨の中歩いていたので、風邪をひきました。
現在分詞の例②
Studying hard every day, she passed the exam.
毎日一生懸命勉強したので、彼女は試験に合格しました。
過去分詞の例①
Confused by the complicated instructions, I asked for help.
複雑な指示に混乱したので、私は助けを求めました。
過去分詞の例②
Tired from the long journey, we went straight to bed.
長旅で疲れていたので、私たちはすぐに寝ました。
完了形の例
Having finished my homework, I went out to play.
宿題を終えたので、私は外に遊びに行きました。
独立分詞構文の例①
The sun shining brightly, we decided to go to the beach.
太陽が明るく輝いていたので、私たちは海に行くことにしました。
独立分詞構文の例②
My friend being sick, I visited him in the hospital.
友達が病気だったので、私は病院に彼を見舞いに行きました。
独立分詞構文の例③(過去分詞)
The work completed ahead of schedule, everyone was able to go home early.
作業が予定より早く完了したので、全員が早く帰宅できました。
独立分詞構文の例④(完了形)
The storm having passed, the sailors set out to sea.
嵐が過ぎ去ったので、船乗りたちは海に出航しました。
独立分詞構文の例⑤(代名詞)
Him being the captain, we all followed his orders.
彼が船長だったので、私たちは皆彼の命令に従いました。
文脈による判断が必要な例①
Considering his age, he runs quite fast.
彼の年齢を考えると、彼はかなり速く走ります。
この例文では、「Considering his age」の主語は誰でしょうか?これは文脈によって異なります。「彼の年齢を考慮している」のが話し手(私)なのか、「彼」自身なのかによって解釈が変わります。一般的には、このような表現は「話し手が考慮している」と解釈されることが多いです。
文脈による判断が必要な例②
Generally speaking, prices have gone up this year.
一般的に言って、今年は物価が上がりました。
この例文では、「Generally speaking」は慣用表現として使われており、明確な主語を持たない場合があります。このような表現は「一般的に言って」「全体的に見て」という意味で使われ、特定の主語を想定しない場合もあります。
分詞構文は、日常会話とビジネスシーンでは使われ方が少し異なります。特に主語の扱いに違いが見られることがあります。
日常会話では、分詞構文はあまり頻繁には使われません。使われる場合も、シンプルな形が多いです。
日常会話での分詞構文①
Feeling tired, I decided to go to bed early.
疲れを感じたので、早く寝ることにしました。
日常会話での分詞構文②
Having lost my keys, I couldn't get into my apartment.
鍵をなくしてしまったので、アパートに入れませんでした。
日常会話では、独立分詞構文はあまり使われず、代わりに接続詞を使った表現が好まれます。
日常会話での表現(接続詞を使用)
Since it was raining, we decided to stay home.
雨が降っていたので、家にいることにしました。
ビジネス英語では、分詞構文はより頻繁に使われます。特に文書や報告書、プレゼンテーションなどのフォーマルな場面で見られます。
ビジネス文書での分詞構文①
Considering the current market conditions, we recommend postponing the investment.
現在の市場状況を考慮すると、投資を延期することをお勧めします。
ビジネス文書での分詞構文②
The project having been completed on time, the team was awarded a bonus.
プロジェクトが予定通りに完了したため、チームはボーナスを与えられました。
ビジネスメールでの分詞構文
Attached please find the requested documents, hoping they meet your requirements.
ご要望の書類を添付いたします。ご要件を満たすことを願っております。
ビジネスシーンでは、独立分詞構文も含め、より複雑な分詞構文が使われることがあります。これは、簡潔さと形式張った表現が求められるためです。
ここまで、分詞構文の主語について詳しく見てきました。最後に、重要なポイントをまとめておきましょう。
分詞構文の主語を適切に扱うことで、文法的に正しく、意味の明確な英文を作ることができます。特に日本人学習者は、分詞構文の主語と主節の主語の関係に注意して、主語が不一致になるような誤りを避けるようにしましょう。
分詞構文をマスターすると、英語表現の幅が広がります。複数の文を一つにまとめることができるため、より簡潔で洗練された英語が書けるようになります。また、上級レベルの英語ではよく使われる表現なので、読解力も向上するでしょう。
分詞構文は難しいと感じる学習者も多いですが、基本原則を理解し、たくさんの例文に触れることで、少しずつ使いこなせるようになります。この記事で紹介した例文やポイントを参考に、ぜひ英語表現の幅を広げてみてください。正しい分詞構文を使いこなせるようになれば、より自然で洗練された英語が書けるようになり、英語力アップにつながります!
鈴木洋一朗 / Yoichiro Suzuki
大学では言語学(生成文法理論)を学び、学習塾や予備校で10年間英語教育に従事。その後、IT企業でマーケティング、プロダクト開発などを担当。2016年に当サイトを開設。